皮弁法

広背筋皮弁法

腹直筋皮弁法

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皮弁法とは、体の一部分の皮弁(皮膚、脂肪や筋肉など)をひとかたまりに、血行のある状態でほかの部位に移植する方法です。
この皮弁を用いて乳房を再建する皮弁法ですが、自分の組織を移植するため自家組織再建の一種でもあります。

皮弁には様々な種類があり、採取できる大きさや煩雑さ、傷のできる部位などから候補を絞って選択していきます。乳房の再建には比較的大きな、柔らかい組織が必要なので、背中(腰に近い部分)から皮弁を移植する「広背筋皮弁法」や、下腹部から採取する「腹直筋皮弁法」などが最も汎用されています。
そのほかにはお尻や太ももから皮弁を採取することもありますが、この代表的な二つの皮弁法について述べていきたいと思います。

広背筋皮弁法

広背筋という名前の筋肉が腕の付け根から背中、腰にかけて広がっていますが、この筋肉にウエスト付近の脂肪をつけて、胸に移動させる方法です。
腕に近いほうの筋肉や血管をつけたまま、皮膚の下を通して切開部へ振り子のように移動するため比較的血流が安定していて、移植が可能です。
移植できる脂肪の量がそれほど多くないため、小~中程度の大きさの乳房の再建に適しています。

腹直筋皮弁法

臍から下の下腹部の脂肪を乳房へ移植します。その際に、いわゆる腹筋である腹直筋の一部を血管とともに付けて移植する方法が一般的です。
いったん体から完全に切り離して、胸の血管とつなぎ合わせる遊離腹直筋皮弁法といわれる方法がよく用いられます。
腹部の脂肪を広範囲に移植するため、大きな乳房も再建でき、おなかのお肉もすっきりするという利点があります。下腹部の皮弁にはいくつかのバリエーションがあり、片側の腹筋をすべて利用して血管吻合をなくした有茎腹直筋皮弁法や、腹筋を全くつけないで血管と脂肪のみの状態にして移植する穿通枝皮弁法などが用いられます。
筋肉をたくさんつければ簡単で血流も安定しやすいですが術後の腹筋は弱くなりヘルニアのリスクが高まります。穿通枝皮弁は筋肉を温存できますが、手技がやや煩雑となり、また皮弁全体の血行を安定させるのが困難な場合もあります。

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一般に皮弁法による手術は時間がかかり、広背筋皮弁法で3-5時間、腹直筋皮弁法では8-10時間程度かかります。そして入院期間は2-3週間程度かかるでしょう。
腹直筋皮弁法の場合は術後、腹部に負担をかけないようにベッド上で安静にしなくてはいけない期間があります。また、退院してもしばらくは運動や皮弁採取部に負荷のかかる動作は控える必要があります。
3か月以上たてば、運動制限もなくなり、ほぼ元通りの動作ができるようになるでしょう。

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皮弁は自分の脂肪組織を移植しているため、出来上がった乳房は柔らかく自然な手触りです。下垂乳房も工夫次第で再現することができます。
また、一般的に加齢とともに生じる多少のボリューム変化や下垂も再現されやすく、術後のメンテナンスは基本的に不要と考えられます。

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皮弁法による手術では、皮弁の血流がとても大切です。血管が詰まる血栓が生じると、皮弁が一部または全部壊死してしまう可能性があります。
その他の原因でも一部の皮弁血流が悪くなると、乳房の一部が固くなったり、変形が生じたりする可能性があります。そのほかには広背筋皮弁法では術後に比較的高率に背中の漿液腫(水がたまる)が生じ、しばらくは外来処置が必要になることがあります。
腹直筋皮弁法では腹部の壁が弱くなるため、ヘルニアが生じることがありますが、最近では筋肉の採取量を少なくする傾向にあるので、それほど多くはありません。

合併症ではないですが皮弁法による手術では、必ず、皮弁を取った部分に新しく傷ができます。特に腹直筋皮弁法を採取した後の傷はやや長いので、症例写真などで確認しておいた方が良いでしょう。

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通常の乳房切除術を受けた後、ほとんどの場合で皮弁法の適用が可能です。
放射線照射を受けた後でも、血流の良い皮弁を移植することで柔らかい乳房を再建することができます。ただし、放射線で胸部の血管がダメージを受けている場合や、皮弁採取部に以前に手術をしていて血管が残っていない場合などは手術が困難になる場合もあり、他の方法を検討せざるを得ないこともあります。

皮弁法では手術と術後しばらくは大変ですが、いったん再建してしまえばその後は基本的にはメンテナンスが不要で、柔らかく自然に揺れる乳房の再建が可能です。
人工物を挿入することに抵抗がある人手術の際に十分な時間が取れる人に向いているといえます。乳房が大きめで下垂がある人の場合、健側乳房の手術をしないである程度の対称性を得るためには皮弁法の方が適しています。

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乳房再建方法を徹底比較!